アカデミー賞にもノミネート!スピルバーグ監督の描く2021年版「ウエストサイドストーリー」とは?

映画・本
映画は、洋画中心に年間約50本見ています。よく見る映画はド派手なアクションや学びのあるガールズエンパワーメントムービなど。Netflix、ディズニー+加入中。鑑賞済み映画のレビューやおすすめ映画をご紹介します!
「West Side Story」はこんな人におすすめ!
  • ミュージカルが好き
  • 舞台版「West Side Story」を愛してる
  • ラブストーリー、悲恋が好き

概要

監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー

ニューヨークのウエスト・サイドには、夢や自由を求めて世界中から多くの人々が集まっていた。しかし、差別や偏見による社会への不満を 抱えた若者たちは、やがて仲間と集団を作り激しく敵対し合っていく。ある日、“ジェッツ”と呼ばれるチームの元リーダーのトニーは、対立 する“シャークス”のリーダーの妹マリアと出会い、瞬く間に恋に落ちる。この禁断の愛は、多くの人々の運命を変える悲劇の始まりだった…。

Filmarks より

有名ミュージカルをなんと巨匠・スティーブン・スピルバーグ監督が作成するとのことで、公開前からかなりの評判だった本作。第94回アカデミー賞 作品賞にもノミネートされ、期待値は鰻登りです!

第94回 アカデミー賞ノミネート
  • 作品賞
  • 監督賞(スティーブン・スピルバーグ)
  • 助演女優賞(アリアナ・デボーズ)
  • 撮影賞
  • 衣装デザイン賞
  • 美術賞
  • 録音賞

スティーブン・スピルバーグ監督といえば…

スピルバーグ監督作品でやっぱり思い出すのは「ジュラシックパーク」「E.T.」、そして最近だと「レディ・プライヤー1」といった王道エンタメ映画たち…
そんなエンタメ映画の大御所が、なぜ「West Side Story」という古典のミュージカルを再度映画化しようと思ったのでしょうか。雑誌「VOGUE」のインタビューで、監督はこのように語っています。

この物語はあの時代だけの産物ではない。あのような時代がまためぐってきているし、それにともなう社会の怒りがすさまじい。
この国にやって来た移民で、暮らしを立て、子を育て、外国人への偏見や人種差別と闘うプエルトリコ人たち、つまり、ニューヨークのプエルトリコ人たちの壮絶な苦闘をどうしても伝えたいと思ったんだ。

VOGUE BY ANTHONY BREZNICAN 2020年7月24日

確かに近年は、欧米諸国を中心に移民問題が多く取り立たされるようになってきたと思います。SDGsの観点からも移民やその差別は国際的にも大きな問題となっています。
スピルバーグ監督が描く、移民の生活やその活気と苦悩…。ものすごく興味をそそられます!

歌と演出

本作は、1957年にブロードウェイミュージカルとして上演され、その後1961年に映画化されているので、リブート作品ということになります。1961年版の「ウエストサイド物語」は私も学校の英語の授業で見たような記憶があります。
そんな、超有名なこの作品のヒロインを演じたのは、この作品がほぼデビュー作となるレイチェル・ゼグラーです。なんと3万人のオーディションで選ばれたそうで、この後にはディズニーが製作する実写版「白雪姫」の白雪姫役も決まっているそうです。
彼女の歌声は本当に美声で、透き通るような高音は讃美歌のようで聴いていて癒されます。これは、実写版・白雪姫も期待できそう!

また、アカデミー賞で助演女優賞にノミネートされているアリアナ・デボーズの歌声も力強く、明るく最高です。アリアナ・デボーズはトニー賞にもノミネートされた経験があり、歌唱力は間違いがありません。

演出に関しては、アメリカ版「ロミオとジュリエット」というのがわかりやすい演出がされていたのが好印象でした。ベランダで「tonight」を歌うシーンはロマンチックそのものでうっとり。また、「America」を歌い上げるシーンも色彩がビビットで「これぞミュージカル!」という華やかさ。ミュージカルシーンの歌、演出共に文句のつけようがありませんでした!

果たして、今やる意味があったのか

ミュージカルシーンには文句のつけようはないのですが、今作は話の本筋は1961年版からほとんど変更されていません。なので、舞台版・1961年版を愛している方にはいいかもしれませんが、今これを見ると、どうしても「プロットが古い」と思わざるを得ませんでした。

ラブストーリーでありながらクライムストーリーでもある本作ですが、あまりにも暴力による犯罪に対しての対応が軽すぎて、今見るとどうしてもそこで興醒めしてしまう。行き場のない若者たちのことを描いているはずなのに、「犯してしまった過ち」への対応が稚拙に描かれているので、どうしても両者を肯定できないのです。

ここで争う「ジェッツ」と「シャークス」は似たもの同士なんですよね。より強者である「裕福な白人男性」に追いやられてそこにしか居場所がない。狭い「居場所」を巡って争っている2組。でも、現代において本当に伝えなきゃならないのは、「戦う相手はそっちじゃない」ってことなんじゃないでしょうか。「居場所」を争っているジェッツとシャークスは、本当は手を取り合って「裕福な白人男性」に抗議できるのでは…?本当の彼らの敵は、「そっち」なのでは…?
そんなことが気になってしまって、ラブストーリーやスピルバーグ監督が描きたかった「移民の苦悩」に集中することができませんでした。

移民の苦悩を描いた物語なら、「インザハイツ」の方が端的で明るく描ききっているように感じました。興味を持たれたら、ぜひジョン・チュウ監督の「インザハイツ」も見てみてください!


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